もう名前も思い出せないけど

保育園の頃に、私はおかっぱ頭で完全にお母さんの好きなようにさせられていた。(でも多分みんなそうだったと思う)さいきん友達が小さい頃におかっぱだった子って過去を振り返るの辛そうだよねって言ってたけど彼女はきっと私が昔おかっぱだったなんて微塵も知らないから言えたことなんだと思うし、何も言わなかった。まあそんなことはないし、当時はそこまで自我に目覚めて無かったから気にしても無かった。とりあえず私は女の子っていうよりは男勝りで顔も男の子みたいで、今、写真をみてもやっぱり可愛くないなと思う。

もう名前も思い出せないけど、すごく仲の良い男の子がいて、その子と会う前まで私はいつもおやすみの時間(保育園では各々の布団があって寝る時間があった)に泣いてなかなか寝ない子だったらしいのだけど、その子と友達になってからいつも布団の中で二人で戯れあっていた。その子が家の事情で転園するとき、私はまさかいなくなるなんて思ってもみなくてただ普通にいつも通り、大きなクッション積み木を積み上げて2人でよじ登って遊んでたのだけど、高いところまで来たときに何故か手の甲にキスされて、仰天して落ちてしまったのだった。それまで男の子と女の子の違いが本当によく分かっていなくて、朝見るテレビもいつもお姉ちゃんがセーラームーンを見てたから私はセーラームーンの変身シーンでうさぎの口が無いのが異常に怖くて見てなかったし、タキシード仮面とセーラームーンを見てたらきっと違ったのだろうけど、落ちた後でひどく泣いて、結局その子とのお別れはちょっと苦味の残るものとなってしまった。そんなことをごくたまに何故か思い出すことがあって、それは大抵安定していて眠りに入る寸前だったりするから、きっと私が死ぬ寸前にもまた思い出すんだと思う。彼も今の歳になって手の甲にキスなんてしないと思うし、覚えてもいないかもしれなけど、私にとって忘れられない思い出を与えてくれた彼が、元気に今もどこかで過ごしていてくれたら、それはもうたまらなく嬉しいことで、こういう全く覚えていない人のことを思える自分がちゃんといることが、きっと嬉しくてこの記事を書いたのだと今気づいた。